令和8年熊本地震 相続税の申告期限延長と財産評価

地震発生前に相続が開始していた場合の取扱いの整理(一般的なケーススタディ)
令和8年9月9日時点の公表情報に基づく
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令和7年12月に相続が開始したケースでは、 相続財産に熊本県内の土地があれば、 相続税の申告・納付期限は少なくとも令和9年5月28日まで自動的に延長されます(租税特別措置法69条の8)。
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被相続人の死亡時の住所地(=相続税の納税地)が指定4市町にある場合は、 国税通則法11条の地域指定による延長も重なり、 「別途国税庁告示で定める期日」と令和9年5月28日のいずれか遅い日まで延長されます。
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熊本県内の土地は「特定土地等」として、 相続開始時の時価に代えて地震発生直後の価額(令和8年分路線価等×調整率)で評価することを選択できます(措置法69条の6)。 家屋の被害は災害減免法6条による課税価格からの被害額控除で反映します。

1 前提となる指定の状況(時系列)

年月日できごと・指定根拠
令和8年7月28日令和8年熊本地震が発生(=特定非常災害発生日)
令和8年8月7日激甚災害に指定令和8年政令第259号
令和8年8月7日特定非常災害に指定(相続の承認・放棄の熟慮期間の伸長〔令和9年3月31日まで〕等の措置を適用)令和8年政令第260号
令和8年8月12日国税通則法11条の地域指定を官報に掲載。指定地域に納税地のある方の、令和8年7月28日以降に到来する国税の申告・納付等の期限を自動延長(申請不要・全税目)国税庁告示第21号
令和8年8月下旬相続税・贈与税の期限延長・災害減免・財産評価に関するリーフレットを国税庁が公表下記リンク集
国税通則法11条の地域指定(期限の自動延長の対象)
熊本県 八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町
国税庁告示第21号(令和8年8月12日)。延長後の期日は「別途国税庁告示で定める期日」とされ、令和8年9月9日時点で未定
措置法の評価特例で用いる「特定地域」(被災者生活再建支援法3条1項の適用地域)は、 上記4市町より広く、令和8年8月10日現在で熊本県内全域とされています。 期限延長の「指定地域」(4市町)と評価特例の「特定地域」(県内全域)は範囲が異なる点に注意してください。

2 申告期限の延長

原則

相続税の申告期限は、 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。 令和7年12月に相続が開始したケースでは、 原則の期限は令和8年10月頃に到来し、 地震の発生日(令和8年7月28日)より後になります。

延長の仕組み(2本立て)

ケースA
被相続人の死亡時の住所地が指定4市町にある場合
通則法11条の自動延長と措置法69条の8が重なり、 「別途告示で定める期日」と令和9年5月28日のいずれか遅い日まで延長されます。 納付期限も同様に延長されます。
ケースB
死亡時の住所地が4市町の外(熊本市・県外など)の場合
県内の土地(特定土地等)があれば、 措置法69条の8により令和9年5月28日まで延長されます。 実際に被災して申告が困難な場合は、 所轄税務署長への申請による個別指定(通則法11条・同施行令3条3項)の併用も可能です(期限経過後の申請も認められます)。
最初に確認すること
相続税の納税地は「被相続人の死亡時の住所地」であり、 相続人の住所地ではありません。 どちらの延長が働くかは被相続人の住所地で決まるため、 まずここを確認します。 なお延長は納付期限にも及び、 延納・物納の申請期限も延長後の期限によることになります。

3 土地の評価 — 特定土地等の特例(措置法69条の6)

次の要件を満たす土地等は、 課税価格に算入する価額を、 相続開始時の時価に代えて「特定非常災害の発生直後の価額」とすることができます(選択制・有利な方を選べます)。

要件本ケース(令和7年12月相続開始・県内の土地)
特定非常災害発生日前に相続等により取得令和7年12月の相続取得で該当(対象となる取得時期は令和7年9月28日〜令和8年7月27日)
申告期限が発生日以後に到来原則期限が令和8年10月頃のため該当
発生日(令和8年7月28日)に所有申告前に売却していないことを確認
特定地域内の土地等特定地域は熊本県内全域(令和8年8月10日現在)のため、県内の土地は該当

4 家屋の評価と災害減免法

家屋は特定土地等の特例の対象外のため、 通常どおり固定資産税評価額に基づいて評価します(財産評価基本通達89・倍率1.0)。 地震による家屋の被害は、 災害減免法6条により、 課税価格に算入する価額から「被害を受けた部分の価額」(保険金・損害賠償金などで補填される部分を除く)を控除する方法で反映します。

区分被災の時期内容・手続
災害減免法6条 申告期限に被災
(今回のケースはこちら)
課税価格から被害額を控除。申告書に被害の状況・被害額を記載し、計算明細書を添付
災害減免法4条 申告期限に被災 被害があった日以後に納付すべき税額のうち被害割合に対応する部分を免除。災害のやんだ日から2か月以内に免除承認申請書を提出

適用要件(いずれかを満たせばよい)

「動産等」は、動産(金銭・有価証券を除く)、不動産(土地・土地の上に存する権利を除く)、立木を指します。 家屋・家財は含まれ、土地は含まれないため、 家屋の被害が大きいケースでは(2)の基準の方が満たしやすくなります。 なお土地の被害部分も、(1)の判定と控除の対象には含まれます。
評価特例と災害減免の併用
特定土地等の評価特例(措置法69条の6)と災害減免法6条は、 対象と仕組みが異なるため併用が可能と考えられます。 ただし、土地に液状化・地割れなどの物理的被害がある場合、 調整率による評価減と被害額控除で同じ被害を二重に反映しないよう注意が必要です。 個別の当てはめは所轄税務署への確認をお勧めします。

5 実務の進め方(令和8年9月9日時点)

未確定・公表待ちの事項

期限は少なくとも令和9年5月28日まであるため、 これらの公表を待ってから申告作業を進めるのが現実的です。

先行して準備できること

小規模宅地等の特例など「申告期限」を基準とする要件(保有継続・事業継続など)は、 延長後の期限で判定されることになります。 未分割で申告する場合も延長後の期限が基準です。 なお、相続の承認・放棄の熟慮期間の伸長(令和9年3月31日まで)は、 地震発生前に熟慮期間が満了していた相続には適用されません。

6 公式情報へのリンク